今回のレビューは、先日発売された2ndアルバム『Catnip Dynamite』も好評の、元Jelly FishのRoger Joseph Manning Jr.が2006年にソロ名義で発表した1stアルバム『Solid State Warrior』です。
バック・トウ・ザ・ティーンエイジ・ドリーム6点 永作佳紀
ああ高校生のときのイメージだぁ。ボクは高校生のとき、夏になったら女の子たちと海に行ったり、バーベキューをしたり、好きって言われたり、フフフ、っていう妄想をしょっちゅうしていた。高校生のときはそれを妄想するだけで楽しかったなぁ。そんなイメージを喚起させてくれる音楽だな。楽しいよ、楽しいぜ。ウキウキするんよ。なにも考えなくても高校生のときの妄想に浸れるんよ。
ボクはこの一週間、実家に帰った。ということで今回は東京と実家の田舎でこのアルバムを聞いたことになる。東京で聞いたときは上記のような雰囲気が広がって気持ちよかった。
そして実家の田舎で聞いた。大音量でね。無限の時間の中でね。ああボクはもう学生時代が終わりですよ。夏に女の子たちと海に行かなかったなぁ、っていうか大学生になったら合コンというものをするのかと思ったが結局一回もなかったなぁ、ドラマで作られた妄想の出来事ってなかったなぁ、ってな具合で妄想が妄想で終わってしまったことを考えていた。
ボクはタイムスリップをした。ニヤニヤが止まらないんです。ウキウキするんです。ボクは今、高校生のときのテンションだと気づいた。高校にどのように制服を着て行こうか? 気になる女の子とどのように話そうか? なんか恥ずかしいわ。夏休み明けの教室に入るときみたいで恥ずかしいわ。明日久しぶりの教室の友だちに会った途端、笑ってしまうわ。そんなこと考えながらひとり、もだえていました。
このアルバムの所為ですよ。実家で聞いていて確認したけど、このアルバムはボクの高校生のときの感覚にフィットする曲たちである。すぐにあの雰囲気を思い出させてくれる。しかも実家で聞いていたとき、ボクは確実に高校生でした。
この世で一番、魔法に近いもの7点 ササキ・タカシ
「物理法則から外れた現象を意図的に起こす事」が“魔法”の定義であるとするならば、ラヴィン・スプーンフルが唄う通り、やはりこの世で一番“魔法”に近いものは音楽だと思うんですよね。だって単なる物体の振動の波でしかないものが、人間の感情を動かしてしまうわけなのですから。
このロジャー・ジョセフ・マニングJrの1stソロアルバムに収録されている11曲を聴いていると、まるで自分の思い出のアルバムを、アルバムといっても写真のアルバムですよ? 思い出のアルバムをゆっくりと1ページづつ見ているかのような錯覚におちいるのです。ほら、昔の写真を見てるとその当時の空気感とか自分がどんな感情を持って生きてたとか、過ぎさった時間がぼんやりとリプレイされるじゃないですか。それと一緒で、ぼんやりと風景が浮かんでくるんです、それぞれの曲に、それぞれの風景が。それってたぶん、僕の中にある妙に楽しかったり妙に切なかったり妙に悲しかったりっていう感情を、的確なメロディと音色で表現してくれているからだと思うんですよね、このアルバムの音楽が。
このアルバムははっきり言って、先鋭的なサウンドなんて皆無と言っていい。一聴して、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ラズベリーズ、イエス、クイーン、XTCなど、カラフルでポップなサウンドとメロディを作った先人たちの意匠で構成されていることに簡単に気付くことが出来きます。単なる、良い曲。単なる甘いメロディなだけの良い曲が11曲並んでるだけの代物なのです。しかしてなぜ、こんなにも心が動かされてしまうのか。忘れていたあの頃の感情が、なぜこんなにも引っ張りだされてしまうのか。説明なんて出来ないのですよ。これはもう、音楽=魔法だから、としか、説明のつけようがない。ロジャー・ジョセフ・マニングJr、あなたはたぶん、魔法使いなのですよ。自分で気付いてないだろうけど、あなたは魔法使いなんじゃないんですか? だって、あなたが作った単なる物体の振動の波でしかないものが、僕の感情を動かしてしまうわけなのですから。
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テーマ:洋楽CDレビュー - ジャンル:音楽
- 2008/03/31(月) 00:02:52|
- レビュー
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| コメント:2
>お2人のレビュー、興味深く読ませていただきました
>
>高校生の時のイメージか~
>このアルバム、聴いてみたくなりました!
書き込みありがとうございます。
ロジャー・ジョセフ・マニングJr、ぜひ聴いてみてください。
特に3曲目とかが僕は好きです。
- 2008/04/04(金) 14:38:58 |
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