今回のレビューは、安室奈美恵が2005年にリリースしたアルバム『Queen of Hip-Pop』です。
真打の登場です7点 ササキ・タカシ@管理人(25歳・男)
こればっかりはちょっと本気で文句を言いたいんだけどね、どうして日本のR&B、和製R&Bの女性シンガーの歌っていうのはさ、ああ歌詞が受け身なのばっかりなんだろうね?っていう、さ。 「私はあなたを想っています」とか「あなたといるだけで幸せです」とか「あなたに想いが通じなくて悲しいです」とかって、世界観がまるで演歌と変わんないじゃん? なんか、いかにも男の存在を中心とした“つくす女”な歌詞ばっかりでしょ、愛は男から授かるものだっていうのが前提の歌詞。 だからどんなにバックトラックが良くてもそういうのだったりするとちょっと萎えるっていうかさ、「いや、俺ら別にそんな一途な女性像を求めてねえよ」って思っちゃってまともに曲が聴けないわけ。で、しかも、なんか知らんけどそういう曲の方が現実問題、世の女性たちにはウケちゃったりするわけじゃない? それが意味わかんないんだよなー。みんなそんなに“つくす恋愛”をしたいのかね? 俺が女だったら、もっとフェアな恋愛観の歌詞に感情移入するけどなあ。だから、俺あんまり聴けねえんだわ、J-POPの女性シンガーの曲。ごめんね、オタクっぽいロックした聴かないんだ普段。女の子が聴いてるような音楽に詳しくなくて、ホントごめん。…え、安室? え、ちょ、ちょっと待って、安室、安室ね、安室ちゃんは別、別! 安室ちゃんは例外だよ! 聴く聴く、すげえ聴くもん俺、安室ちゃんのアルバム。いや、もう最高にカッコ良いでしょ。一度落ち目になった人が再びオリコン1位になるって、どんだけ凄いんだよ!ってね。 まあね、そりゃそうですよね。だって単純に、曲が良いもん。日本で安室ちゃんだけじゃん、USメインストリームなR&B/HIP-HOPを歌謡曲として成立させてるのは。PVとか見た? もう、ガンガン攻め(笑)。俺、勃起しそうになっちゃった(笑)。マジで。アルバムで言ったら、そうだなあ、…やっぱ『Queen of Hip-Pop』かなあ。ま、正直、安室ちゃんはその前後の作品、『Style』も『Play』も、あとSUITE CHIC名義のやつも超がつくほどの名盤なんだけどね。ただほら、SUITE CHICのはまだちょっと「やらされてる感」が出ちゃってるし、『Style』はちょっとイナタイ部分が残っちゃってて。逆に『Play』はちょっとコスプレ着ちゃってる感じがするし、やっぱりポップとエッジのバランスが良い按配で出来てるのは『Queen of Hip-Pop』だねえ。だって『Queen of Hip-Pop』だよ? ヒップ・ポップの女王って、なんだそりゃ(笑)。歌姫はたくさんいるけど、女王は一人しかいない、ってことでしょ? そんなのカッコよすぎるわ。もう安室ちゃんのせいで他の歌姫が全員霞んじまうよ。安室ちゃんを前にしたらビヨンセなんて外国人ストリップバーのストリップ嬢だし、倖田來未なんか上野のキャバクラで働いてるキャバ嬢ですよ。あ、俺、酔ってきちゃったかも(笑)。君はR&Bとか聴くの? え、俺? 全然。R&BもHIP-HOPも全然苦手だよ、俺は。聴かない聴かない。…え、じゃあどうして安室ちゃんは聴くのかって? いや、だってもう安室奈美恵って存在には、R&BとかHIP-HOPとかロックとかポップスとか、ジャンルなんて概念は完全に無意味だと思わない? 『安室奈美恵』っていう名のエンターテイメントの女王様なんですよ、彼女はね。
ニッポンを侮るなかれ4点 タカシ(28歳・男) →
Rock ? Stock ? Nonsense !! まずエロい。なにがって、歌声がエロい。色気を武器にするアーティストは国内外問わず多くいるが、彼女のそれは他のそれとは違うのだ。たとえば倖田來未が「エロカッコイイ」を提唱しているにもかかわらず音楽は全然エロくもカッコよくもないのとは反対に、安室奈美恵には無意識に自然と滲み出てしまう類の色気がある。しかしそれでいて単に下世話、とは違う。誰かに媚びることの一切が見当たらず、我が道を行くと言わんばかりの歌声には艶がありつつも「威風堂々」という言葉がバチコンはまる。
いや、そもそも音楽自体が媚びてないんである。「いま」で言うところのR&Bに歌謡曲のフレーズを散りばめ、古代尺八を思わせる音やテクノの音色、さらには東南アジアのガムランの音色すら取り入れた音楽性は、異文化を貪欲に吸収することによって成り立つ現代日本文化的な雑食感覚。音の配置や音質の作り方もまさに日本的。メロディ・ラインもどことなく「和」を感じさせ、味がある。
パクリと言われても仕方がないほど洋楽の模倣を意識した音楽を作るアーティストが少なからずいるこの国にあって「欧米音楽をただ単に模倣することを、頑なに拒む姿勢」、それに積極的に自覚的なところが窺え、その姿勢もまた威風堂々で「なに、文句あんの?」なんて言葉のひとつも聞こえてきそうだ。
つまりはJ-ポップというフィールドのど真ん中にいながらにしてどこにも媚びてない。むしろアウトサイダー。でもポップ。音の中を縦横無尽に、ときにしんなりと、エロティックな、しかし高らかな歌声が踊るさまが、なんとも、いいじゃないか。という具合にグッとくる。
加えるに、王制なんて存在しないここ日本で「女王」と名乗ってしまう悪ノリ極まれりな思い切りの良さ。といっても、このある種日本的な音楽の中にいる安室奈美恵の「女王」は、たとえるなら、欧米のそれではなく和服着用。どちらかといえば、やんちゃな邪馬台国の女王「卑弥呼」的。そんな彼女が海外に乗り込んで華麗に踊っている感じ。おてんばに、かつ、大胆に。エキゾチックに。そこに色気があるもんだから、こんな女王になら従えてもいいけどな、俺は。なんて思えてくる。いや、そういう趣味はないんだが。
安室奈美恵といえばスーパー・モンキーズとかいうグループのひとりだったよね、という認識しかなく、今回、初めて彼女の作品を聴いた俺。中々いいじゃないか、他の作品も聴いてみようかしら、という感じなのだが、少し残念に思ったのは、過剰にプロデューサーの色が出ているな、ということであった。いや、悪くはないし、良いといえば良いのだが、物凄く良い、とは言い難い。過度に装飾されたサウンド構築という檻の中に入れられるほど、安室奈美恵は小さくないんじゃないか、と思ってしまうわけである。でも、この色気は癖になる。って、結局そっちにいくのか俺は。
安室奈美恵さん、お久しぶりです。1点 永作佳紀(23歳・男) →
創作集団 Ditto 安室ちゃん聴けなかった。どうも、なんでか聴けなかった。っていうか聴こうとしなかった。邦楽なんてダッセーよ! みたいな感じもあったし、洋楽を真似たような音楽なんか聴けるか! って思っている自分が恥ずかしくて・・・。そうなのである、安室ちゃんを聞く前にそんな先入観があったために聴けなかったのである。
これはどうしたものか。こんな気分になるのは初めてなのです。他のアーティストではこんな先入観はないのです。
ボクが安室ちゃんを聴いていたのは『キャン・ユー・セレブレイト』ぐらいまででそれから全く聴いていませんでした。そのときはボクにとってはかっこよくて、かわいくて歌も良いし、ってな具合でスーパースターみたいな感じだったのです。好きだったなぁ安室ちゃん・・・みたいな、安室ちゃんのノスタルジーにひたっているだけで十分な感じがありました。だから最近の安室ちゃんの曲にも興味もなかったし、本人にも興味がありませんでした。
こんな風に自分の文章を読んでいるとなんか気持ち悪い感じがしてきたのでユーチューブで安室ちゃんを見てみました。
あぁごめんなさい。かっこいい。ボクの気持ち悪いノスタルジーの記憶なんかより断然光っとる。
安室さんに久しぶりに会った感じです。
ゆっくり聴いて行こっと。
参考リンク
PONY♂ ENTERTAINMENT INC. 安室奈美恵 「Queen of Hip-Pop」(ΘωΘ) meryland(ΘωΘ) Queen of Hip-Pop ♪安室奈美恵安室奈美恵「Queen of Hip-Pop」(05年)〜もう最高ですッッ!〜|hirocksの、Happy Life & Free Music安室奈美恵「Queen Of Hip-Pop」 : 小心者の杖日記
今回の選盤理由(ササキ・タカシ@管理人)
・7月30日にベストアルバム『BEST FICTION』がリリースされるので。
・彼女のアルバムの中から本作を選んだ理由は、ササキの記事中に書いてある通りです。
・メインストリームで安室奈美恵より面白いことをやってるロック・ミュージシャンなんて、現状、いないですよね。
次回(8月3日更新)のレビューは、
Beck『Modern Guilt』です。テーマ:邦楽CDレビュー - ジャンル:音楽
- 2008/07/28(月) 02:39:12|
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レビューで点数を付けることについて管理人のササキです。
既にお伝えしました通り、故障していたうちのパソコンが修理から戻ってきました。
意外に早く戻ってきたので良かったです。
いろいろお騒がせいたしまして申し訳ありませんでした。
故障中の時にゆるぅく更新したチャットモンチーとThe Libertinesのレビュー記事をいろいろ編集し直したました。
と言っても、あんま変わってないんですけど。
それで、「あれ? 投票するやつはどうしたの? やめたの?」とツッコミが入ったのですが、あれ、やめました。
以前の記事中にあったじゃないですか? 読者の皆様に点数付けてもらうやつ。
あれをやるのはまだ早いと思ったんですね、うちのブログでは。
参加してくださった方、ご投票ありがとうございました。
機会を見て、また復活させたいと思います。
しかし、点数を付けるのって、どうなんでしょうね。
いや、ほら、うちのブログのレビュー、なんの疑問もなく10点満点で採点してるじゃないですか?
最初は単に、僕が選んだアルバムの感想を永作くんと僕が書くってことだけをやるつもりだったんですけど、「点数付けた方がわかりやすいし、面白いよね」ってことでイージーに採点することにしたんですよ。
でもね、最初の時点でもうちょっと10点満点評価に対する是非を検討すべきだったなと、いまさらながら思ってるわけです。
だって音楽なんて、とりわけポップ・ミュージックなんて、完全にナマモノなわけじゃないですか?
僕、ゆらゆら帝国の『空洞です』の採点にもの凄く苦労したんですよ。
あれ、聴くシチュエーションによっては「8点だ!」って思える瞬間もあるし、逆に「あれ? そんなに面白くないや。3点」って時もある難儀なアルバムなんですよね。
だからね、そんなナマモノたる音楽にですよ? 果たして絶対値で評価を下してしまって良いものなんでしょうか、っていうね、そういう疑問が、ちょっとありまして。
現時点では採点の基準は各レビュアーさんたちにおまかせしているのですが、みなさん、どう思ってるんでしょうかね。
まさゆき氏が『空洞です』のレビューを点数なしで寄越してきて時は「ちくしょう! その手があったか!」とちょっと悔しい思いをしたんです。
採点すべきものに対して「採点できない」って意思を表明することは、場合によってはどんな点数をつけるよりも具体的で明確な批評になりますから。
ま、とにかく、今のところ点数評価をやめるつもりはないんです。
だって、ねえ、やっぱり点数とか付いてた方が、刺激的ですよ。
自分の文章能力の不足を補うためにも、点数とかわかりやすいバロメーターが必要ってのもあるんですけどね。
ちなみに僕、ミュージック・マガジンの10点満点評価とかクロス・ビートの五つ星評価とか、あんま信用してないです。
ああいうのは色々オトナの事情みたいなのも少なからずあるんでしょうし。
それはいいとしても、彼らって点数の付け方が甘いですよ!
ミューマガのなんて最低点数5点なのかよ! っていう、ねえ。(保母大三郎氏のオモシロレビューは例外として)
CBなんて最低点数★★☆かよ! っていうね。(たまに「★☆」とかビックリするような低いのもありますが)
もっと大きな範囲で優劣をつけなきゃ採点なんてする意味ないですよね。
とかなんとか言いながら、このブログの過去のレビューをズラっと振り返ってみましたら僕も5〜8点の点数しか付けてないや。
だははー、テキトーだなあ自分。
や、でも言い訳させてもらいますと、当たり前じゃないですか、こういう点数になっちゃうの。
だって僕がお題を選盤してるわけですから、僕の気に入ってるアルバムばかりレビューしてるんです。
僕の採点基準は、今まで僕が聴いてきた全てのアルバムの平均点が4.5点くらいになるような感じでやってます。
基本的に評判の良いやつか自分が好きなアーティストのやつしか聴かないので、平均点以上のは「かなり聴ける」アルバムだと思ってください。
9点なんてよっぽど思い入れがあるのしか付けられないし、10点なんて最初っから付ける気ないです。
あんまり高得点ばかり付けちゃうと、本当に素晴らしいと思った作品の点数を付ける時に困っちゃいますからね。
11点以上は付けられないわけだから。
言い訳というわけではございませんが、ここ1〜2年で僕が「それほどでもないな」と思ったアルバムを下に書きます。
個々の批判をすることには興味ないので、コメントなしでただただ羅列させてください。
ザ・フィーリング『ザ・フィーリング』 3点
トム・ヨーク『ジ・イレイザー』 4点
YUI『FROM ME TO YOU』 3点
オルソン『ブライト・アイデア☆ひらメキ!』 4点
ルースター『サークルズ・アンド・サテライツ』 3点
ザ・グッド,ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン 3点
パール・ジャム『パール・ジャム』 2点
ベル・アンド・セバスチャン『ライフ・パースート』 3点
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『ステイディアム・アーケイディアム』 4点
ザ・ストリーツ『ザ・ハーディスト・ウェイ・トゥ・メイク・アン・イージー・リヴィング』 2点
エール『ポケット・シンフォニー』 3点
カイザー・チーフス『アングリー・モブ〜怒れる群集』 3点
パニック!アット・ザ・ディスコ『フィーバーは止まらない』 2点
ハイラマズ『カン・クラッダーズ』 3点
ザ・ロング・ブロンズ『サムワン・トゥー・ドライヴ・ユー・ホーム』 3点
ファウンテインズ・オブ・ウェイン『Traffic & Weather』 3点
鈴木亜美『CONNETTA』 3点
イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ『ザ・ウィヤードネス』 3点
ストレイテナー『リニア』 1点
アイドルワイルド『メイク・アナザー・ワールド』 2点
マニック・ストリート・プリーチャーズ『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』 4点
THA BLUE HERB『LIFE STORY』 3点
ロックスリー『ドント・メイク・ミー・ウェイト』 3点
100s『ALL!!!!!!』 2点
ASH『トワイライト・オブ・ジ・イノセンツ』 4点
シミアン・モバイル・ディスコ『アタック・ディケイ・サステイン・リリース』 4点
リンキン・パーク『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』 4点
ポール・マッカートニー『追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル』 4点
Mr.Children『HOME』 3点
ザ・ピジョン・ディテクティヴズ『ウェイト・フォー・ミー』 3点
ザ・トゥワング『ラヴ・イット・ホエン・アイ・フィール・ライク・ディス』 3点
スマッシング・パンプキンズ『ツァイトガスト』 1点
ファイスト『リマインダー』 3点
ジ・エナミー『ウィル・リヴ・アンド・ダイ・イン・ジーズ・タウンズ』 3点
ザ・クロマニヨンズ『CAVE PARTY』 4点
エイミー・ワインハウス『バック・トゥ・ブラック』 3点
イエティ『ユメ』 4点
M.I.A.『カラ KALA』 4点
ロバート・ワイアット『コミックオペラ』 2点
フー・ファイターズ『エコーズ,サイレンス,ペイシェンス・アンド・グレイス』 3点
ザ・ナショナル『ボクサー』 4点
東京事変『娯楽(バラエティ)』 4点
ザ・ランブル・ストリップス『ガールズ・アンド・ウェザー』 3点
ブルース・スプリングスティーン『マジック』 3点
ザ・ピペッツ『ウィ・アー・ザ・ピペッツ』 4点
ジャック・ペニャーテ『マチネ』 3点
9mm Parabellum Bullet『Termination』 4点
以上、点数つけるのって傲慢だけど刺激的で楽しいよね、ってお話でした。
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- 2008/07/08(火) 23:52:56|
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今回のレビューは、7月2日に初のリミックス盤『REMIX 2005-2008』をリリースしたゆらゆら帝国の、2007年リリースの最新オリジナルアルバム『空洞です』です。
2008年7月、空洞はまだまだ続く。8点 マサ太郎(22歳・男) →
Blogs Like Teen Spirit 2 ライブドアの本拠地ブログ(リンク参照)において、「最近の若手からは喜怒哀楽の表現衝動を感じない」という主旨の記事を書いたが、それはなにも若手だけに限った問題ではない。「ただ何となく生まれて何となく消費されて何となく消えていく音楽」が、今あまりにも垂れ流されているように思える。いや、もしかしたら、人間の感情こそがその弾力性を失い、芸術表現の根源としての機能を既に果たしていないのかも知れない。では、いわゆる先進国に生きる人間たちは、もう十分な程の自由や幸福を手にしてしまったのだろうか?少なくとも俺は、そんなことは絶対にないように思う。
例えばプライマル・スクリームのボビー・ギレスビーは、『スヌーザー』誌のインタビューにおいてこう答えている。「人は自由になんかなっていないよ。ただ、欲しい物をそれなりに買えるだけの金を持っただけさ」と。「何かが欠落したような感覚」を、ただ物欲を処理することで満たす。その一時の解放感を自由と履き違えて。我々の享受するこの現代的な生活は、高度資本主義の奴隷だとも言われる。足りないのは時間か、金か、それとも愛か。そんな今の捻れた気分を反映してか生まれた、ただ「何かを欲すること」を徹底的に放棄したロックがここにある。
得意だったハズの鼓膜破壊型ファズ・ギターがまろやかなトレモロへと変わり、各楽器においてもテクノ譲りのミニマリズムが徹底的に貫かれている。ルーチン、ルーチン、ただルーチン。それは、さしずめ適度に飼い慣らされた奴隷としての現代人、あるいは都合よく矯正された資本としてのミュージシャン。今は「敵が見えない時代」だと言われる。確かに安倍は異常だった。が、「反体制こそがロック」なんて、もうギャグにすらならない。そんな状況下にあって、坂本慎太郎は苦い現状認識スレスレの言葉を曖昧に転がし、「敢えて抵抗しないこと」を歌う。
「まだ生きている」という曲名も示唆的だが、「できない」というのもなかなかショッキングだ。そして「67年以降の音はとても聴けない」というサイケ人間・坂本慎太郎の現在地として申し分ないモダン・サイケ・ナンバー「学校に行ってきます」を抜けると、途方もない虚脱感に襲われる。「ひとりぼっちの人工衛星」と名付けられた、孤独な人工衛星に立場を借りるその曲において、主人公は暴力がまかり通ったこの惑星をただ眺めている。もちろん、人工衛星になるところにある種の諦めはあるが、地球から離れられないところには優しさと愛情がある。
最近は失言をキッカケとする芸能人ブログ炎上や、事務所サイトに寄せられる大量の抗議書き込みというものも珍しくなくなったが、何となく薄気味悪い気がするのは俺だけだろうか?何となく、みんな「反撃が来ないところ」に攻撃対象を求めているだけのような気がするのだが。あるいは、無意識の内の政治の独走や思想の統制化がカジュアルに進行しているようにも思える。そんな中、「敢えて積極的に無自覚になること」を提案したゆらゆら帝国の存在は貴重だ。これこそクロス・レビューの題材として相応しい。そして、空っぽな空気が無表情な国を覆うこの2008年においても、俺はこの『空洞です』をただ聴き続いている。
まぁいいかぁ〜6点 永作佳紀(23歳・男) →
創作集団 Ditto ゆらゆら帝国の『空洞です』といえば・・・
大学4年生の8月の上旬だったなぁ。
夜、家に帰って来て仮眠をとろうと思ったらがっつり寝てしまった。パソコンの電源をつけっぱなしで寝てしまった。朝の5時くらいに目が覚めた。そのとき、つけっぱなしのパソコンから「ゆらゆら帝国」の『空洞です』が流れていた。
エアコンをかけないで窓も閉めたままで眠ってしまったため起きたら汗がびっしょりだった。朝の早い時間だったので夏でも空気が冷たくて汗がヒンヤリ冷たかった。
まだ寝足りないと思いながら夢見心地で冷たい空気を感じながら、パソコンから流れる『空洞です』を頭のテッペンらへんで聴いていた。
空が茜色で夕方か朝かわからなかった。ボクは「どっちでもいいや」と思った。今日は友達と映画の撮影のために7時に起きなくちゃいけない。でもボクは「まぁいいか、起きなくても」と思った。お腹が減っているけど面倒くさいから何も食べなくていいやと思った。でものどが渇いていたから水は飲もうと思った。水を飲むために立ち上がってペットボトルに口をつけて水を飲んだ。そしてまた床に寝転んだ。
「ああ、水なんて飲むんじゃなかった」
水を飲んだことに後悔したのではなくて水を飲むために立ち上がったことに後悔をした。あのどこから夢でどこから現実かわからない絶妙な緊張感はなくなっていた。「ゆらゆら帝国」が遠くに聴こえる。もう聴けない。
ボクはパソコンを消してラジオをつけた。そしてボクはまた眠りについた。
しばらくして、ボクはまたボンヤリと目を覚ました。さっきとあまり外の景色が変わっていない、茜色の空。ラジオからは『おはようまだやろう』が流れていた。今日はとことん「ゆらゆら帝国だなぁ、こんなこともあるんだ」と思い、ちょっと笑ってしまった。
外からはアパートの大家さんの子どもの「ただいまー」と言う声が聞こえてきた。「もう夕方かぁ」と思ったが寝すぎて身体がグッタリしていたため動く気にもなれない。一日を無駄にしてしまったが、「それもまぁいいかぁ」とボンヤリと思った。
アンビエント帝国採点不能 まさゆき(25歳・男) →
非社会人的会社員が音楽なんかを語る個人的に今月は「積極的にロックを聴かないでいよう月間」の為、久々にロックが聴けると思ったのに。ゆらゆら帝国って何処なんだ?坂本慎太郎って誰なんだ?とにかく僕とは縁のないバンドだった。かなり昔に、CDだったかMDだったかは忘れたけど、友人からアルバム一枚収録された音源を貸して頂いて聴いた時の僅かな記憶を辿ると、少なくてもこのアルバムよりかは普通にロックをしていた様に思う。これはその頃聴いたものとは大分印象が違う。ツタヤではJ−ロックコーナーに置いてあったけど、僕が普段よく聴いているロックのどれとも違う。ブルース?ラップ?違うな。あえて言うならこれは、言葉があるアンビエント・ミュージック、あるいは言葉によるアンビエント・ミュージックなのか。
もっともブライアン・イーノすら「空港のための音楽」しか聴けていないので信用度はゼロな訳だけど、同じフレーズを永遠と反復させるミニマルなギターを聴いていると、あのアルバムを思い出してしまう。ロックと呼ぶにはあまりにも弱々しく、しかし何かしらの意志はもっている様に感じられる。だけなのかもしれん。始まりはあったけど終わりがない感じ。僕はタバコを吸うのですが、会社なんかにライターを持って行くのを忘れて、でも外に買いにはいけない。禁煙ブームの社内で周りにライターを借りられる喫煙者がいなくて困ってしまい、机の中とかロッカーなんかを永遠とマッチやライターを探してみたりするグダグダな感じ。そんな歌が聴こえてきた。
今回、スコアは付けられませんでした。他のアルバムも聴いてみたいと思いました。
矛盾している5点 ササキ・タカシ
どうしようもない音楽だ。「適度にフリーな奴隷が俺だ」なんて唄われたら、文句のひとつもいえない。おまけに「お前だって、そう」なんて続くもんだからさらに胸糞が悪い。そうだよ、あんたらがどんなに人とは違うスタイルで音楽を作っても、ポップ・ミュージックのフォーマットを逸脱するものなんて作れないよ。聴いたこともない音が生み出されるだなんて誰も信じてないし、何より誰も聴こうとしないよね、そんなもの。結局、西洋音楽に耳を慣れ潰された消費の奴隷ってわけだ、僕たちは。どんなに雑食的なリスナーを気取ったとしても、たった12個の音階で表現できてしまう音楽以外を僕は聴かないし、聴こうともしていない。「片意地張って知ったかぶりすんなよ」って? カンベンしてくれ。並みのリスナーよりも幅広いスタイルの音楽を愛することができる、っていうのをアイデンティティにして今まで音楽を聴いてきたんだ。今さら“ただ聴こえてくる音楽を楽しむ”だなんて、そんなことできるわけがないよ。
どどのつまり、あんたらは何がしたいんだ? 本当に、抵抗をすることを止めてしまったのか? あんたらを大絶賛していた連中が、このアルバムについてこんなことを言ってたよ。「ロック的なカタルシスやダイナミズムやドラマ性やハッタリや過剰な語り口を一切排した」って。本当にみんな、そんな風に思ってるのかな? 少なくとも僕には、このアルバムに収録されている楽曲は十分ドラマティックに聴こえるよ。甘ったるい、砂糖を溶かしたぬるま湯に入っているような気持ちよさに溢れた傑作だ。ん、いや、前言撤回。傑作だなんて微塵も思ってないさ。こんな“なんにもない”音楽が商品として成立してるなんてとても思えない。うん、わかってる。言ってることが矛盾してるな。「ドラマティック」とか言ったり、逆に「なんにもない」とか言ってみたり。でも、どうしようもないんだよね。だってこのアルバムは、ある時には凄く刺激的に聴こえるし、またある時には酷く退屈に聴こえてしまう。挙句の果てには、聴いていてどうしようもなく腹が立つときすらもあるんだ。
客観的に考えると、口うるさいロック・リスナーしか好んで食べないようなニッチなオカズと化しているのがこの『空洞です』です。そういう意味で、くるりの近作やZAZEN BOYSの諸作と同様の退屈さを僕は感じてしまう。ムカつくなあ。本作を訳知り顔で絶賛している連中と、必死に否定しようとしている自分、両方、ムカつく。やっぱり、飼い慣らされすぎてるんだな。『空洞です』に蔓延しているぬるま湯の気持ち良さを素直に受け入れるには、まだあまりにも、時間が、足りなすぎる。
参考リンク
Blogs Like Teen Spirit 2 〜現役理系大学生がエセ文系っぽく語るロックやらソウルやらヒップホップやら〜:【新譜】中堅世代のネクスト・ビジョン (ゆらゆら帝国) - livedoor Blog(ブログ)Blogs Like Teen Spirit 2 〜現役理系大学生がエセ文系っぽく語るロックやらソウルやらヒップホップやら〜:【序章】今こそ振り返ろう、邦楽ポピュラーこの10年。 (ゆらゆら帝国) - livedoor Hirosixx's Music Library | ゆらゆら帝国 "空洞です"ゆういちの音楽研究所: 空洞です/ゆらゆら帝国MEZURASHIYA NEWS - 珍屋 ニュース:ゆらゆら帝国 『空洞です』 - livedoor Blog(ブログ)ゆらゆら帝国 / 空洞です - bounce.com レビューゆらゆら帝国「空洞です」|人生は音楽だHave You Ever Been Experienced? ゆらゆら帝国/空洞です(2007)空洞です/ゆらゆら帝国 - 氏 B A R 。ケニーの気持ち:ゆらゆら帝国/空洞です - livedoor Blog(ブログ)茜ユリの恥日記 ゆらゆら帝国 7thアルバム「空洞です」
今回の選盤理由(ササキ・タカシ)
・7月2日にリミックス盤の『REMIX 2005-2008』が発売されたから、ちょうどいいかなと思って。
・個人的には前作『Sweet Spot』の方が好きなのですが、語るならこっちかな、と。
・このアルバムに点数を付ける行為って、ものすごい踏み絵だと思うんですよね。
次回(7月13日更新)のレビューは、
The Avalanches『Since I Left You』です。テーマ:邦楽CDレビュー - ジャンル:音楽
- 2008/07/07(月) 02:31:03|
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